令和3年度子育て支援講座


マスクの下で、お口の中は大丈夫?


コロナ以降、感染防止のため、長時間マスクを着けたまま過ごすことが多くなりましたが、マスク生活が身体に及ぼす影響も少しずつメディアで取り上げられるようになってきました。

そこで、今回、三鷹駅北口のレミントン歯科 院長 高橋周一先生にお話をうかがいました。

Q.コロナ以降、マスク着用が日常となり、マスクを着けることによる弊害について聞かせてください。


マスクを着けることでどのような弊害があるのか、ということを具体的にお話しする前に、マスクをする意味と期待できる効果について考えてみましょう。

 

まずは飛沫感染防止ですね。お話をするときとかに、唾液、つばが飛んでしまうことをマスクによってブロックする効果。二番目に、ウイルスそのものをブロックする効果。三番目には、見た目としての効果。

 

反対に、マスクをすることによるリスクと逆効果について。

 

まずは、呼吸が苦しくなる。これは、状況を選んでマスクをすることも大事だと思います。二番目に、口呼吸になる。様々な影響があるといわれています。三番目に、表情が見えない。コミュニケーション不足ということで、小さなお子様たちにはとても苦痛なことと思われます。四番目に、口腔機能が衰えやすくなるということもいわれています。

Q.マスクの下では何が起きているのでしょうか。


マスクをすることで、重要な口腔機能をマスクされて(覆われて)しまいます。笑う・怒るなど感情を表現する機能、呼吸する機能、噛む・味わう・飲み込むなど食べる機能、そして話す機能、といった基本的な機能が損なわれてしまうのです。

 

鼻をふさがれ口呼吸になることで、お口が乾燥する。それによって虫歯菌、歯周病菌が増えてしまう。口臭の原因にもなります。お子さんであれば、口呼吸によって歯並びに影響が出てしまうこともあります。鼻呼吸でブロックされていた細菌やウイルスがダイレクトに喉に届いてしまうことによるリスクというのもあります。鼻呼吸で冷やされていた脳が冷やされず、ボーっとして集中力を欠いてしまうということもいわれています。

 

本来の鼻呼吸であれば、鼻腔から咽頭腔を通って肺に空気を送っています。呼吸は生命維持に欠かせないものなので、万が一鼻が詰まっても、口で呼吸ができるようになっています。いま、常にマスクをすることで、大切な鼻呼吸での機能が奪われ、口呼吸になることで様々な害が出ているといわれています。

鼻呼吸で口の健康を保つには、まずは口を閉じて鼻で呼吸しましょう。就寝時に口にテープを貼るのも効果的です。口と舌を、積極的に動かすようにしましょう。口腔機能低下防止のために、「あいうべ体操」「パタカラ体操」も効果的です。

Q.マスクを着ける前にやっておかなければならないことはありますか。


口の機能は命の入り口。いま、マスクの着用が長期化していることで、診療の現場では、虫歯や歯周病のトラブルの患者さんが増えているように思います。理由としては、外出の自粛やコミュニケーション不足により歯磨きがおろそかになっている患者さんが増えていること、ステイホームによる「だらだら食い」といった食生活の乱れ、また、受診控えで受診や定期検診が滞っていることなどが考えられます。

 

「口の機能は命の入り口」ということで、マスクをする前のお口の管理を怠った結果、虫歯や歯周病をはじめとした口腔機能の低下が進みますと、口だけではなく全身の健康にも影響が出ます。呼吸はもとより、生きていくために必要な食事の最初の入り口は口です。その入り口の環境が悪いと、その後すべての臓器の働きに影響を及ぼします。

 

最近よく耳にする腸内細菌も、口腔内に大量の病原性の細菌がいれば、当然腸内細菌の環境にも影響を及ぼし、動脈硬化や糖尿病、がんといった生活習慣病を起こすのではないかということがいわれ始めています。

 

汚れた口の中には、様々な微生物がいます。代表的なスピロヘータ―(歯周病菌)を始めとして、カビ菌の一種であるカンジダアルビカンス、または、原虫口腔トリコモナス、歯肉アメーバなどといったものも見ることができます。

そのなかでも、新型コロナ重症化とお口の中の病原性細菌との関係性ですが、主に歯周病菌が出す内毒素が影響しているといわれています。

 

歯周病菌が出す内毒素により、免疫物質の一種であるサイトカインが暴走を起こし、結果的に喉の粘膜に炎症が起きます。それによってウイルス感染が起こりやすくなります。

 

というわけで、常日頃、マスクをする前には必ずお口の中を清潔にしておいてください。

Q.歯みがきについて気を付けるポイントはありますか。


歯ブラシ・歯みがき粉・洗口剤は何がいいですか、という質問をよく受けますが、一番大切なことは、みがき残しを作らないことです。例えば、四角いテーブルを丸く拭く人は、何十回丸く拭いても隅は必ず残っているわけなので、まず、歯をみがく順番を決め、やさしく細かくみがくこと。フロスや歯間ブラシによる「歯間ケア」もぜひしてください。

 

自分の口に合った歯ブラシとみがき方を知るために、定期的にかかりつけの歯科医院・歯科衛生士による指導を受けることをおすすめします。

Q.他に、コロナ禍で気を付けるべきポイントについて教えてください。


お口の中がきれいであるということを前提に、せっかくマスクをするなら、意味のあるつけ方を知っておきましょう。鼻の横に隙間があるとそこから入ってしまいますし、口だけを覆い鼻が出ていると、自分から飛散することは防止できますが吸い込んだときに入ってしまいます。また、着用していたマスクを顎にかけると、あごについている汚れたものがマスクに付着した状態を再度かけてしまうということになります。

 

最後にお伝えしたいことは、コロナによるマスクの着用をきっかけとして、お口の衛生管理の重要性を皆さんにお伝えしたいと思います。一番大切なことは、いかに免疫力を高めるかということです。なぜかというと、今後、更に新型のウイルスが出てくるという可能性は否定できません。そのために、マスクやワクチン、薬に頼るだけでは、本当の健康は得られないでしょう。最終的には、一人一人がストレスを減らし、お口のケア、充分な睡眠、バランスの良い楽しい食事をとることなど、免疫を高めてウイルスに負けない体を作ることが理想です。まだ先が見えない状況ですが、待っている未来のために、コロナ禍を乗り切っていきましょう。

高橋先生、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。